気持ちのズレや拒否感を触覚で認知するツール
在宅看護で生じる、家族であるがゆえに「身を委ねたくない」といった拒否感など、言葉にできない気持ちのズレを評価できるツールです。
その仕組みは、磁石の反発という触覚に翻訳して認知させる感性評価ツールです。
手に持つオブジェクトを、机上に並ぶ段階的強度の磁石群の上で動かすことで、感情の強さに対する反発力とズレる感覚を身体で受け取ることができるのです。


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概 要
在宅看護で生じる「身を委ねたくない」といった拒否感など、言葉にできない気持ち値のズレを、磁石の反発という触覚に翻訳して認知させる感性評価ツールです。
手に持つオブジェクトを、机上に並ぶ段階的強度の磁石群の上で動かし、感情の強さに対応する反発力を身体で受け取ることができます。同じ動作で他者が追体験できるところが、今までとは異なる認知媒体なのです。
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デザインのポイント
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数値や言語に依らず、感情のズレを触覚で認知させる新しい媒体です。
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被介護者が表現した感情の強さを、介護者が同じオブジェクトで動作することで触覚的に追体験できます。
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在宅看護や家族介護の現場における、言葉に依らない相互理解をします。
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本ツールの開発理由と背景
超高齢社会の進展と共に在宅看護・家族介護が一般化する一方、現場では「下の世話を頼みたくない」「身を委ねたくない」といった、言葉にしづらい拒否感や尊厳の揺れが、日常的に生じています。
VASやリッカート尺度といった、既存の評価尺度は、これらを数値化することはできても、家族間の関係性の中で生じる感情のズレを、当事者同士で共有とはなり得ません。
そこで、2011年グッドデザイン賞受賞の概念モデル可視化ツール「rami」以来、「曖昧な感性をいかに表現するか」を一貫した問いとして探求してきました。
視覚的GUIによる可視化は、他者との認識差を「見える」ものにしましたが、依然として「自分ごと」として実感されにくいという限界を残しています。
そこで、本デザインは、感性のズレを視覚情報ではなく触覚体験として届けることで、患者中心医療の理念を具現化する新しい媒体を実現することを目指しました。
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開発経緯と成果
反発力を「感情のズレ」として読み解ける装置に仕上げるため、磁石の極性配置、握り部の形状、対称性と段階差、素材の選定について複数試作を重ねました。
当初は強弱しか伝わらない反発に、「拒否」と「遠慮」「迷い」を区別できないという課題に直面しました。
しかし、改良を経て、机上の磁石を強度ごとに段階配置したオブジェクトに、手持ちのオブジェクトをかざす位置で部分的に制御ができる構造に到達することができたのです。この「コントロール不能性のなかの可制御性」こそが、拒否感や尊厳の揺れの本質と響き合う設計原理とであることが分かったのです[特許申請中]。
握り部は身体に沿う丘状の有機的形状とし、素材には温度と重みを持つようにしました。
検証では、言葉では言いにくい「遠慮」の強さが、同じ動作を辿った他者にも同時に伝わることができたのです。このことから、視覚的データが「理解」を促すのに対し、本ツールは「共感」を起動させる媒体として、社会的意義を裏付けるものであると考えています。
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本ツールの核となるポイント
既存の感性評価ツールは、リッカート尺度やVASに代表される数値的・言語的評価、または視覚的可視化ツール(レーダーチャート、ヒートマップ、概念モデル可視化ツール「rami」もこの系譜に位置する)に大別されます。
こうした既存のツールは、いずれも「評価結果を見て理解する」という認知経路に依存しており、被評価者の感情の質感そのものを、評価者が自分の身体で受け取る手段を持っていません。
一方、本デザインは、被介護者が表現した感情の強さを、介護者が同じオブジェクトによる動作で触覚的に追体験するという、新しい認知経路を提示しています。
HCI領域のハプティクスデバイスとは異なり、電力もセンサーも介さず、磁石の物性のみで構成しています。これは、誰でも、どこでも、即時に体験可能である点でも、従来のデジタル型評価ツールと隔絶しており、媒体としての構造そのものが、本作の独自性となっています。
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本ツールの可能性
本ツールが提示する「言葉では言い難い感情の追体験」という認知経路は、評価行為そのものの再定義を試みています。これは、従来の評価方法が「他者の感情をデータ=数値として理解する」行為であったのに対して本ツールは「他者の感情を自分の身体で再現する」ことで、共感理解を起動させることができる違いです。
これは、医療者が患者の体験そのものに近づくという患者中心医療の理念を、抽象的な理念から具体的な装置としてのツールで具現化する試みなのです。
2027年3月末実の正式発売以降は、在宅看護、家族介護、教育現場、カウンセリング、組織内対話など、様々な立場や役割の異なる人々の間で言語化を越えた感情の共有が求められる多様な場面への応用展開を計画しています。
人と人の関係性に、これまでにない共感の共有という可能性を開きたいと考えています。
① ツールの構成
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気持ちのズレや拒否感などを、5つの強さの異なる磁石から感じることができるツールと7つの強さの異なるものの2種類で校正しています。被介護者の負担を少なくした方が良い場合や、介護者同士で被介護者の推移を詳細に評価したいという場合などによって使い分けを可能にするためです。

② 反発力の調整
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手で持つオブジェクトの中の写真です。微妙な反発力の調整は、この図のような調整によってコントロールしています。

③ 5段階の反発力のイメージ(動画)
拒否感は、磁石の反発力の差で理解できます。5段階の反発力を強い方から順番にご覧ください。

④ ズレの感覚(動画)
少しずれた瞬間にコントロールできな微妙な感覚が、言葉では表現し難い拒否感として理解できるはずです。これは、③の反発力=拒否感とは、全く違ったものです。
それは、瞬時に分かる自己の気持ちと、相手が感じるズレとして理解することができるのです。
見ただけでは決して分からない「反発力+ずらされる力」が、瞬間的に気持ちの理解となる意義は大きいきいことに気がつくことができるのです。
